野本 一雄さん(仮名)

  (住所:神戸市仮設住宅 年齢性別:55才男性 職業:無職)


 今、表は台風でごうごうと風邪がうなっている。私は昭和17年生まれの55才です。この仮設に来て1年半が来ます。6月から仕事が切れて毎日ふらふらして仮設の中ですごしているが、本当に仕事もなく、金はなくなるわ、仕事の見通しはないわで私の年齢でも一人で夜、「俺はこのまま死ぬんじゃないか」と考えたりすることがあります。私たちより、1まわり2まわり上の年齢の人達が、孤独になったり、自殺したりする気持ちが分かる気がします。市、県、国も一生懸命いろいろやっていることも私なりにわかりますが、何か違うんではないかと思います。
 土地の区役所なりがもっともっと仮設に来て親身にもっとなってやらねばと私はこの2カ月毎日仮設で暮らして思います。口や立て前で言ってることと役所に人達がもっと仮設というものを把握しなくては、相談相手にもなれないと思います。私が仕事もなくてブラブラしている間に1度も仕事のこと、生活のこと、身の回りのことで役所の人が「何か困ったことありませんか」と言ってくれたことがありませんよ。私はまだ自分のことは自分できるから別に困りませんが60〜70才の年齢の人達は本当に困っていることがたくさんあると思います。
 県、国もですが土地に密着している市役所、区役所の職員が親身になってやらねばと思います。住宅住宅と言って話しを住宅のほうばっかりもっていっても本当の復興にはならないと思います。住む家はボロでも人間らしい暖かみのある人達と出会い、その人達との思いやりのある老後を送りたいものです。
(1997年7月31日)


 現在、私はこの仮設で生活しております。全国的に復興々々で皆様方が一生懸命にやっていただいていますのに、このようなことを言って良いかどうかと思いますが、今日は思ったことを書いてみます。
 市か県か国か被災者達か、住む家をまず老人達にやってきて早3年になります。年老いた人、寝たきり老人―みんな大事にしなければと思います。大切なことと思います。しかし、神戸が復興して他の県や市と同じように活気に満ちた街に戻るには、仮設に住んでいる人達の中にも元気で働ける者が多勢いることを忘れてはならないと思います。住む家も、老人達も、孤独死をなくしてボランティアも大事なことの一つとは思いますが、働ける者を一生懸命働かすことが一番大切なことではないでしょうか。何かの本で、人間する事がないのが一番の不幸であると読んだことがあります。
 市、国、県がまず働ける者に仕事をさせる、そして収入があれば明日からまた1年先2年先の生活の夢も見えてくると思います。自分に夢があり、生活にゆとりが出来るようになれば、他人のこと、老人のこと、また日曜・休日にボランティア―いろいろのことを仮設内にいても考えることが出来るようになると思います。
 まず元気な者が働ける場所をこしらえてやって下さい。そうすれば酒、孤独死も少しは減るのではないでしょうか。みんなに助けてもらうことばかりでなく、自分達のことは自分達でやる、それには働ける者は働かす、働く意欲のない者には意欲を持たすようにしてもらいたい。
 「年寄りには年寄りの仕事。毎日毎日食っちゃ寝食っちゃ寝では体にも悪いし、毎日灰色の人生。このままで自分の一生は終わりか」とみんな口には出さんけど、心の中では思っていると思います。
 家より仕事、年老いた人達、寝たきり老人、孤独死、この人達中心のことでなしに、働ける者中心のことを考えてやっていたら、これらいろいろのことも解決すると思います。もちろんいろいろのことをおろそかにして、働ける者を大事にせよということではないですよ。書きたいことを書くには、もっと紙面が欲しい。
(1997年7月18日)





野本 一雄さんへ届いた『かみひこうき』



1.永田雅人(Wally)さん

 初めまして、私は阪神・淡路大震災でボランティアの世界に迷い込んだ者です。あれから年に3回程神戸に出かけています。
 毎回出かける度に、神戸の移り変わりと変わらぬものを感じて関東に戻っています。
 本来変わらなければならないものが変わらなくて、変わらないで欲しいものが変わってしまう・・・このもどかしさを感じながらも、私はまだまだ皆さんと語ったり遊んだり、時にはイベントを起こしたりしたいと思います。
 ですから、今後ともども「遠くの隣人」としてよろしくお願い致します。
(1997年11月18日)

2.古川飛祐さん

 こんにちは。1997年7月31日のかみひこうきを拝見しました。60〜70才の年齢の人達 は本当に困っていることがたくさんあると思うと考えておられる野本さんは優しい方 ですね。建物のことばかり言っても本当の復興にはならない。暖かみ、思いやりのあ る人達との生活が大切とおっしゃる野本さんご自身、暖かみにあふれています。そこ に人々が集まり、穏やかに暮らされることを、心から願います。お体を大切にして下 さい。
(1999年8月21日)


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